イラスト用のテクスチャと聞くと、人によっては敷居の高さを感じるかもしれない。
正しい知識と、テクスチャの調達方法を知っていれば、イラスト制作のクオリティも飛躍的にアップする。
今回は、テクスチャを自前で調達する方法にフォーカスして解説していきたいと思う。
イラスト用テクスチャとは
支持体の質感表現
デジタルイラストの場合、選択範囲内に色を流し込むことで、一切のムラがない画一的な色面が形成される。
これはこれで利用価値はあるのだが、画風によってはアナログで描いた時のように、キャンバス(帆布)や紙(古紙や和紙など)の質感が欲しくなる時がある。
“イラスト用テクスチャ”の代表的な利用方法の一つが、この、支持体由来の“ムラ”表現。
デジタル作画でありながら、アナログ風味の画面が再現できる。
エレメントの質感表現
3DCGでは、少ないポリゴン数でもテクスチャを貼ることで、質感を大幅にアップするテクニックがある。
これを2DCGに逆輸入すると、テクスチャと相性の良いエレメントに対し、テクスチャを合成すれば、わずかな工数で質感の大幅アップが可能。
テクスチャには、“描き込み量”を手数を用いずに補強できる利点がある。
エフェクト
テクスチャには、質感表現の他にも、一部、または全体に対して合成することで、特殊な画面効果(エフェクト)を与えることができる。
合成するテクスチャの種類により、感情の比喩や、雰囲気作り、照明、天候など、画面の印象を自由自在に操作することが可能。
イラスト用テクスチャの調達方法
昨今のスマートフォンは高性能なカメラを搭載しており、更に好都合なことに、このスマートフォンを身体の一部のように常に肌身離さず持ち歩いている。
つまり、出先で遭遇したテクスチャ素材を、そのままスマートフォンのカメラで撮影してしまえば、自分専用の“イラスト用テクスチャ”として利用できるというわけだ。
今回は、実際に“イラスト用テクスチャ”を調達するために、東京都内を徘徊することにする。
恵比寿ガーデンプレイス周辺
まず最初に訪れた場所は、恵比寿駅から「恵比寿スカイウォーク」経由で数分程度南下した場所に存在する「恵比寿ガーデンプレイス」。
この界隈は、整備された公園や、複合施設群が立ち並び、「レンガ造り」や「タイル造り」の建造物が多いのが特徴。
恵比寿ガーデンプレイス界隈では、需要の多いレンガ系テクスチャを中心に調達しておきたい。
恵比寿界隈探索開始
動く歩道である「恵比寿スカイウォーク」を横目に、恵比寿界隈をテクスチャを求めて徘徊。
すると、早速、テクスチャとして手ごろな“生け垣”を発見する。
植物系(生け垣由来)テクスチャ生成例
このような“生け垣”は、そのまま生け垣の質感テクスチャとしても利用できるし、植物系の質感テクスチャとしての使い道もある。
樹木の枝葉表現、草むら表現などは、影色やハイライトだけではどうしても“色味”の奥行きが物足りなくなる。
テクスチャで補強することで、自然物ならではの“色味の奥行き”を獲得可能。
恵比寿ガーデンプレイス時計台広場近辺
続いて、恵比寿ガーデンプレイス時計台広場周辺。
先程の「恵比寿スカイウォーク」と、この「恵比寿ガーデンプレイス時計台広場」との間には、「アメリカ橋公園」も存在する。
これらのエリア一帯では、壁面や床面、道路や塀などにレンガやタイルがよく使われている。
そこで、このエリアでは、主に“レンガ系テクスチャ”をメインに物色したいと思う。
レンガ系及びタイル系テクスチャ(ガーデンプレイス産)生成例
テクスチャ一般に言えることだが、適用するサイズ(縮尺)で効果や印象がガラッと変わる。
カメラの性能が許す限りの最大画素数で撮影しておけば、用途に応じて拡縮をかけることで、1テクスチャが様々な一面を見せてくれる。
レンガやタイル系のテクスチャは、そのまま、レンガやタイルの質感系テクスチャとしても利用できるが、
表面の独特の風合いをエフェクト系テクスチャとして利用するのも面白い。
樹皮系テクスチャ
樹皮系のテクスチャも使い勝手が良いため、各種そろえておきたい。
樹齢のイッている樹木の樹皮の方が歴史が刻まれている分、テクスチャとしての価値も高い。
都内などの都会で、樹齢のイッている樹木を探す場合、手ごろなのは“街路樹”。
歴史ある街道沿いの街路樹は、街路樹自体の樹齢も高い傾向にある。
または、神社仏閣の御神木。
公園や住宅街の保存樹なども候補に挙がってくる。
恵比寿ガーデンプレイスタワー直下
恵比寿ガーデンプレイスタワー直下には、巨大で美しい柱が立ち並ぶ。
「恵比寿ガーデンプレイスひろば」には、至るところに小洒落たベンチが設置されており、休憩するのに困ることはない。
こういった構造物は、作画の際にその構造を正しく理解しておくことで、画に説得力が増す。
景丘ちいさい秋公園近辺
レンガ系及びタイル系テクスチャ(景丘産)生成例
住宅街まで足を進めると、生活感漂うエリアにたどり着いた。
家屋の外壁やブロック塀など、商業施設とは毛色の違うテクスチャを調達するには、手広く徘徊する必要がある。
戸山公園周辺
ジョギング広場A付近
続いて、高田馬場駅から徒歩数分程度の場所に存在する「戸山公園」。
今回は戸山公園界隈のテクスチャを物色したいと思う。
戸山公園をはじめ、公園内にある樹木は、手厚い保護下で管理されているため、樹齢がイッており、立派な樹木が多い。
樹皮はもちろん、枝葉も優良なテクスチャになるため、確実に確保しておきたい。
戸山公園の近隣からは「住友不動産新宿ガーデンタワー」が臨める。
美しいビルのため、高層ビル作画の参考に、構造を正しく理解しておきたい。
戸山公園界隈の山手線線路沿いには上記のような石垣も見受けられる。
このような石垣もテクスチャ需要が高いため、複数パターン所持しておきたい。
岩石系テクスチャ(戸山公園界隈産)生成例
有栖川宮記念公園周辺
東京都立中央図書館付近
続いて、広尾駅から徒歩数分前後に位置する「有栖川宮記念公園」。
有栖川宮記念公園は美しい日本庭園と、併設施設の東京都立中央図書館を有する。
庭園の方では各種保護樹が優良なテクスチャになるため、押さえておきたい。
池の水面もテクスチャとして面白い効果が期待できる。
このような都会の中にある日本庭園は、自然とビルが調和し、その影が水面に映り込む。
その場所でしか入手できないテクスチャは希少性が高いため、
テクスチャコレクターを名乗るなら、全国各地に存在するテクスチャを求めて日夜、飛び回る必要があるだろう。
タイル系テクスチャ(有栖川宮記念公園産)生成例
實相山正覚寺近辺
正覚寺本堂
このような神社仏閣系には、御神木や石像など、テクスチャとしても価値の高いものが多い。
目黒清掃工場周辺
このような煙突や、塔の類は構造物として非常に興味深い造形をしている。
タイル系テクスチャ(目黒清掃工場付近産)生成例
総括
テクスチャは意外と身近な場所に潜んでいると、気づきを得られたのではないだろうか?
自分だけのオリジナルテクスチャは、それだけで何物にも代えがたい価値がある。
ぜひ、積極的に自前でテクスチャを調達してほしい。