去る2018年、ポケモンGOにも遂にPvP(対人戦)が実装された。
長らくポケモンGOのバトル面を支えてきたジム戦やレイドバトルから、更にブラッシュアップされた、次世代の戦闘システム、
「トレーナーバトル(GOバトル)」では、
CP上限別による3つのリーグが存在し、戦略の幅が大幅に上昇、原作とは、ひと味違う駆け引きで勝敗を決するようになった。
お待たせいたしました! もうすぐ登場する対戦機能「トレーナーバトル」の初お披露目です! 3つのバトルリーグや2つ目のスペシャルアタックまで、盛りだくさんとなっています! https://t.co/mdKXJJAITn #GOバトル pic.twitter.com/vOcOMlOKC1
— Pokémon GO Japan (@PokemonGOAppJP) 2018年12月4日
トレーナーバトル(GOバトル)概要
CP制限による3つのバトルリーグ
トレーナーの皆さんの熱気は十分ですね! 対戦機能「トレーナーバトル」の新情報その①!「トレーナーバトル」には、スーパーリーグ、ハイパーリーグ、マスターリーグの3つのバトルリーグが導入されます! #GOバトル pic.twitter.com/7v9OQb95sy
— Pokémon GO Japan (@PokemonGOAppJP) 2018年11月30日
スーパーリーグ(Great League) | CP1500以下 |
ハイパーリーグ(Ultra League) | CP2500以下 |
マスターリーグ(Master League) | CP制限なし |
スーパーリーグ:CP1500以下
ジム戦やレイドバトルでは、使い物にならなかった、種族値の低いポケモンでも、CP1500付近まで育成することで、今まで日の目を見なかったマニアックな面子でもバトルに挑めるリーグ。
育成コストが低く、気軽に用意できる強ポケも多いため、初心者でも参加しやすい一方、
参戦しているポケモンの種類も多いため、咄嗟の判断力、対応力など、PvPスキルの差もでやすいため、対面ゲーではなく、スキルゲーで勝負をしたい上級者も主戦場にしている、GOバトルで最も人気のあるリーグ。
ハイパーリーグ:CP2500以下
育成コストを低く抑えたい場合は、スーパーリーグ、ジム戦やレイドバトルで育成済みの強ポケを流用したい場合は、後述のマスターリーグに流れるため、
ハイパーリーグには、ほぼハイパーリーグ専用のポケモンを用意する必要があり、駒や育成資源に乏しいライト勢には、敷居の高いリーグとなっている。
マスターリーグ:CP制限なし
期間限定の伝説ポケモンを含めた、希少性の高い(育成コストのかかる)高種族値ポケモンの高個体値(100%)を最大PL40、或いはPL50まで鍛え上げることが前提となる。
このリーグで頂点を極めるには、廃人レヴェルのやり込みプレイをしていなければスタートラインにすら立てない、文字通りマスターのための廃課金者向けリーグ。(期間限定の伝説レイドで100%個体が出るまでプレミアムレイドパスの札束で殴り合えるトレーナーが有利のため)
対人戦のバトルシステム
疑似リアルタイム制バトル
原作ではターン制のコマンドバトルがお馴染みだが、ポケモンGOではリリース当初からリアルタイムのアクションバトルが採用されている。
「トレーナーバトル(GOバトル)」でも引き続きアクションバトルとなった。
原作のバトルと差別化する意味でも、アクションバトルの継続は必然だと思われる。
体感的にはリアルタイムのアクションバトルなのだが、ポケモンGOではTCP(Transmission Control Protocol)という通信プロトコルでサーバーとパケットのやりとりをしているため、
信頼性は高いがオーバーヘッドが大きく(処理が重くなりがちで)、リアルタイム同期には向いていない。
そのため、技術的には0.5秒刻みのターン制となっている。
ジム戦やレイドバトルで“避けバグ”が発生するのも、プログラムのバグというよりは、通信プロトコルの仕組み上、やむを得ない事だともいえる。(通信ラグによるバグは、仕様として受け入れる他ないのである。)
そうなってくると、問題となるのが対人戦での“避けバグ”なのだが、ナイアン(Niantic, Inc.)は面白いアイデアでこの問題を克服した。
「シールド」の導入である。
新しいバトル要素「シールド」
通信ラグの影響を受けやすいスワイプによる「回避」を廃止し、新たに「シールド」システムが導入された。
「シールド」を展開すれば、相手のゲージわざをほぼ無効化できる。ただし、1試合で「シールド」が展開できるのは“2回”まで。
更に新要素として、ゲージわざ発動時に約4秒間タップ連打でダメージの威力がアップ。この4秒間前後で防御側はシールドを展開するか判断する必要がある。
2019年7月20日からゲージ技発動が、連打からスワイプによるミニゲームに変更された。
ジム戦やレイドバトルと異なり、シールド以外にダメージを回避する手段がないため、今まで以上にタイプ相性によるダメージ補正(軽減)が重要となるだろう。
これは、想像以上に戦略の幅が広がったといえる。
「シールド」まとめ
- スワイプによる「回避」は廃止
- 「シールド」を展開すれば相手のゲージ技をほぼ無効化できる
- 「シールド」で防げるのはゲージ技のみ(通常技は回避不可)
- 「シールド」を展開できるのは1試合に2回まで
- 「シールド」を展開するかの猶予時間は約5秒間
バトルパーティは3体(3対3)
これまでのジム戦やレイドバトルではバトルパーティに6体までポケモンを選出できたが、対人戦ではバトルパーティに3体までポケモンを選出できる。
3体であらゆる仮想敵に対して対処しなければならず、今まで以上に一匹あたりの役割負担が増えたといえる。
2つめのスペシャルアタック(ゲージわざ)
これまで、ポケモンGOでは通常技(わざ1)とゲージ技(わざ2)の2つしか技を覚えることができなかったが、対人戦実装とともに、もう一つのゲージ技(わざ3)が習得可能となった。
このサードアタック(わざ3)をアンロックするためには「ほしのすな」と「ポケモンのアメ」を消費する必要がある。
3つまで技を習得可能になったため、タイプ一致わざのほかに、自分の苦手なタイプに対しての反撃技など、1体のポケモンに複数の役割を持たせるために、技のタイプを分散させることが勝敗の鍵を握る。
ゲージ技の仕様変更
これまでのポケモンGOでは、通常技と敵ポケモンからの被ダメージで、ゲージ技用のエネルギーが貯まり、“3分割ゲージ技”や“2分割ゲージ技”といった、分割ゲージ数で、発動タイミングや、ゲージ技のストック数が決まり、技の優劣が決まっていた。
これが、対人戦からは、敵ポケモンからの被ダメージではゲージ技用のエネルギーが貯まらなくなり、ゲージ技用のエネルギーを貯めるには通常技を連発する他なくなった。
更に、ゲージ技を放つためのエネルギーの貯蔵量が“100エネルギー”に統一され、すべてのゲージ技に、個別の発動エネルギー量が設定された。
ステータス画面では、ストックエネルギー枠(100)の中で、何回ゲージわざを連発できるか、分割ゲージ数で確認できる。
ジム戦やレイドバトルから、対人戦用に全ての技が調整された。
ゲージ技(わざ2)とサードアタック(わざ3)
ゲージ技(わざ2)とサードアタック(わざ3)は同時にエネルギーチャージ(通常技のEPTに準拠)され、エネルギーチャージコストの低いゲージ技から発動が可能となる。
どちらか片方のゲージ技を発動すると、両方のエネルギーチャージコストが消費される。(エネルギーは共通で100)
ゲージ技の新仕様まとめ
- サードアタック(わざ3)は「ほしのすな」と「ポケモンのアメ」を消費してアンロック
- すべてのゲージ技に、個別の発動エネルギー量が設定された
- ストック可能なエネルギー量は【100】まで
バトル中の交代
対人戦では、スワイプによる「回避」が廃止となったため、ダメージを軽減する手段が「シールド(回数制限あり)」か「タイプ相性」しかなくなった。
つまり、バトル中のポケモン入れ替えが、自陣の被ダメージ量コントロールで必須テクニックとなったのだ。
攻撃者が発動したゲージ技タイプを予測し、タイプ相性の良いポケモンと交代して被ダメージを抑えることが勝利への第一歩となる。
今までのジム戦やレイドバトルでは(端末性能の差はあったにせよ)基本的にノーリスクでポケモンの入れ替えが出来た。
特にジム戦ではポケモンを入れ替えるデメリットがほぼ皆無のため、後出しジャンケンで有利に戦えた。
しかし、対人戦では一度ポケモンの交代をすると、交代ボタンがグレーアウトし、60秒間交代ができなくなる。
これは、自陣が交代した直後に敵陣もそれに合わせて交代してきた場合、60秒間は自陣のポケモンを再度、交代することができないため、不利な状態で闘わねばならない。
このように、交代タイミングも読み合いが必要なのだ。
その代わり、対人戦ではポケモンを交代してもゲージ技のストックがリセットされない。(ジム戦やレイド戦では、ゲージ技のストックが交代でリセットされた)
つまり、“ゲージの抱え戻し(ゲージを抱えた状態で交代)”が可能となった。
これは、大幅に戦略の幅が広がったといえる。
交代のポイント
- ポケモンを交代すると60秒間交代できなくなる。
- ポケモンを交代してもゲージ増加量がリセットされない。
GBLシーズン20(2024年9月4日~12月4日)から実験的に交換タイマーが60秒→50秒へ短縮
対戦の申し込み方法
対戦するには「対戦コード」を読み取る必要がある。
「対戦コード」を読み取るには基本、対面する必要があるが、仲良し度「親友」以上のフレンドとは距離不問で対戦が可能。
仲良し度「親友」未満の場合は条件に「近距離」も追加されるため、掲示板などを利用して不特定多数のトレーナーと、「対戦コード」のスクリーンショット交換によるリモート対戦はできない。
仲良し度「友達」以上でも、遠隔対戦可能となった。
対戦申し込みのポイント
- 対戦には「対戦コード」を読み取る必要がある
- 仲良し度「友達」以上のフレンドとは距離不問で対戦可
ジムリーダーとのトレーニング
対人戦の場合、他者という存在があるため、人見知りであったり、友達と呼べるような人間が誰一人として存在しない場合、成立しない。
それでも対人戦をプレイしたいという需要のためにナイアン(Niantic, Inc.) はNPCとの訓練という名目で、一匹狼たちを救済している。
ジムリーダー(ブランシェ・キャンデラ・スパーク)との訓練により、「ほしのすな」などのリワードを1日1回獲得できる。
エリートトレーナーメダルの復活
ジムリーダーとの訓練実装にともない、「エリートトレーナーメダル」が復活する。
このメダルは少々いわくつきで、旧ジムから新ジムへ、システムがリニューアルした際に、対象のタスクが消滅したためメダルランクが進められなくなっていた。
対象タスクが存在しないのに、新規で始めたトレーナーにも「エリートトレーナーメダル」のメダル枠は表示されるため、永遠に金メダルにできないメダルとして新参のメダルコンプ勢を泣かせていた。
それが、とうとう復活するのである。
勝敗と制限時間について
試合に勝つためには相手の手持ちポケモン3体をすべて倒す必要がある。
制限時間4分以内に決着がつかない場合は、「ひんし」状態のポケモンの数が少ない方が勝ち、「ひんし」状態のポケモンが同数の場合は残りHPの割合で勝敗が決する。
2019年8月28日から制限時間が30秒延びて、4分30秒に。
勝利条件
- 相手のポケモン3体すべて倒す
- 制限時間は4分30秒
- 「ひんし」状態のポケモンが少ない方が勝ち
- 「ひんし」状態のポケモンが同数の場合は、残りHPの割合が多い方が勝ち
報酬で「シンオウのいし」
レアアイテム「シンオウのいし」や「ふしぎなアメ」などが対人戦のリワードとして入手できる。(ただし低確率)
リワードまとめ
- ジムリーダーとの訓練で1日1回「ほしのすな」などを入手できる
- 対人戦の報酬として、1日3回「シンオウのいし」などのレアアイテムを入手できる
対人戦で使用できないポケモン
「ジム・レイドバトル」との比較
ジム戦
攻撃時
ジムの攻撃時は、ジムで防衛しているポケモンの種類を確認してから、自陣のバトルパーティを編成して挑める。
つまり、完全な後出しジャンケン。そのため、有利タイプのポケモンで一方的に殴ることができる。
この時に重要なのは、できるだけ早く倒すこと。なぜならポケモンGOは基本的には屋外でプレイすることが前提のため、夏は蚊の襲撃、冬は寒さとの闘いとなる。
防衛ポケモンを落とすのに、もたもたしていると「金ズリ」が飛んできて、バトルが長引いてしまう。
これが深夜の住宅街だと不審者に間違われるリスクも高まるため、とにかくジム戦は「早く倒すこと」が正義なのである。
防衛時
ジム防衛時はプレイヤーが操作することができないため、基本的には防衛に適したポケモンを配置し、運よく敵からの襲撃中に気付けた場合は「金ズリ」を投げるくらいである。
最もジム防衛に適したポケモンの代表格は「ハピナス」。
ハピナスはジム防衛の要となるため、現在のジムバトル環境はハピナスを起点に構築されている。
防衛時の評価
返り討ちできる」>「時間切れまで耐えきる」>「時間稼ぎができる」
レイドバトル
レイドバトルも基本はジム戦の攻撃時と同じで、勝敗の閾値は参加人数でほぼ決定し、制限時間内で討伐する必要があるため、ここでも早く倒すことが評価ポイント。
更にダメージ密度が高いとダメージボーナス面でも優遇があるため、やはり攻撃力が高い方が評価が高い。
対人戦(PvP)
これまでのバトル環境を振り返ってきたわけだが、基本は攻撃重視のバトル環境であった。
しかし、対人戦からは、CP制限別のリーグや、スワイプによる「避け」が廃止されたり、「シールド」の導入など、大きくバトル環境が変わった。
一番大きな環境の変化はタイプ相性倍率の変更。
今後は、このタイプ相性のジャンケン勝負となる。
そして、もう一つの大きな変化が、トレーナーバトル専用の技性能変更。
ジム防衛で最強のハピナスが対人戦では並以下の活躍しかできないのは、ハピナスの習得可能な技の性能が、軒並み対人戦に向かない性能に変更された影響が大きい。
これまで注目されていなかった3分割ゲージ技が壊れ性能など、大きな環境の変化に対応する必要が出てきた。
対人戦まとめ
- タイプ相性倍率の変更。
- わざ性能がトレーナーバトル専用に調整。
- スワイプによる「回避」の廃止。
- 「シールド」の導入。
総括
遂にポケモンGOにも対人戦がやってきた。
原作のターン制バトルとの差別化もあり、リリース当初からアクションバトルが採用されていたが、スワイプによる「回避」ではどうしても“避けバグ”が発生してしまう。
これは残念ながら現在の通信プロトコルの仕様では解決が難しかった。
「シールド」というシステムのアイデアは、技術的な制限を考慮しつつゲーム性も担保するクールな解決策であった。
格段に戦略性が向上した新しいトレーナーバトル実装で、バトル環境が大きく変わる。