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『LOTUS-ロータス-』ジャンプ+読切考察【アンギャマン】

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今回は、少年ジャンプ+(マンガ雑誌アプリ※WEBサイトでも公開)読切シリーズから、
アンギャマン先生LOTUS-ロータス-を取り上げたい。

例の如く、プロットの構造から5ブロックまで分解し、1ブロックずつ考察していきたいと思う。

内容の深部まで踏み込むため、未見読者諸賢下記リンクから作品事前鑑賞しておいてほしい。

アンギャマン先生について

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アンギャマン先生は長らく、無料のWebコミックリアル遠足などの旅漫画を自身のWEBサイトを中心に公開していた。

この『リアル遠足』シリーズは大阪の自宅から、交通機関などは利用せず、己の足のみで目的地まで踏破する事を信条とし、

宿泊施設なども利用しない為、休息はテントでの野宿、食事はアンギャマン先生がベジタリアンでもあるため、野草で飢えを凌ぐといった、過酷に歩き続ける行脚の日々を写真マンガ”として発表したもの。

その後、『河童と仙人と』ジャンプルーキーに投稿し、注目を集め、現在の担当者と運命的な出会いを果たす。

アンギャマン先生はデジタル作画の使い手としてもその地位を築いており、ジャンプ+ではフルカラーで『鬼の影』『夜ヲ東ニ』などを精力的に発表。

そして、2018年4月13日(金)『LOTUS-ロータス-』配信に至る。

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『LOTUS-ロータス-』5ブロック詳細考察

それでは早速、『LOTUS-ロータス-』本編をプロットの構造的に5ブロックまで分解し、1ブロックずつ考察していきたいと思う。

因みに、WEBサイト版では見開き(向かい合う2ページ1組)で閲覧できるようになっている為、見開き単位での解説となる。

「次ページ」と記述したら、見開きの左ページを指し、
「ページをめくる」と記述したら、次の見開きの右ページを指す。

あらすじ

何もない部屋で独り佇む科学者のユポ。実験中の事故により、脳以外全て機械となった彼は、この残酷で美しい世界で何を想う...。

注意

ストーリーの根幹に関わるような重要なネタばれは極力避けるが、解説の都合上、かす可能性は十分あり得るため、慎重をす漫画を鑑賞の読者諸賢しょけんは念の為、事前に読了しておくことをお勧めする。

冒頭のリンクから閲覧可能。

カウンターカルチャー弁論センター_ミニキャラ_エドモント-a本体ps カウンターカルチャー弁論センター_ミニキャラ_エドモント-a-ネタバレps

ここから以下、ネタバレ注意!!

第1ブロック:何もない部屋であなたはずっと独りきり

何もない部屋に蓮とユポ

©アンギャマン/集英社

1ブロックは、P1~P4までの、4ページ。

何もない無機質で殺風景な部屋から物語は始まる。

この部屋には生活感がまるでないが、

そんな何もない部屋の中心に、なぜか鉢植え植物
そして、その鉢植えに対面して座っている

顔は見えない。

ページをめくると、扉絵とタイトル。

タイトルLOTUSから、この鉢植えの植物が、ハスNelumbo nuciferaだと判明。

そのはす

「わたしの言葉があなたに届けばいいのに」

©アンギャマン/集英社

と男に語りかける。

次ページでスマートフォンらしき端末のタイマーが作動しPi Pi Pi Piと時を告げる。

蓮のセリフからどこかへ出かける時間らしい。

不気味なフェイスマスク

©アンギャマン/集英社

ページをめくると、不気味に並ぶフェイスマスク”。

それを手に取ると「ガポ」と頭部へ装着し、よく揉み解しながら馴染ませると、
蓮に見送られながら外出するユポ(ここでこの男がユポだと判明)

ここまでが1ブロックである。

生活感のない部屋で孤独に時を過ごす男と、その男の内面を語る蓮。

機械身体人工物(マスク)をハメなければ外出、つまり人前に出ることがはばかれるこの状況。

この先、悲観的な展開しか待ち受けていなそうだが、果たして…

何はともあれ、タイトルにもなっているがこの作品キーポイントになってくるのは間違いないであろう。

第2ブロック:ユポさんはロボットじゃない

外出するユポ、辺りは瓦礫が散乱し廃墟となっている

©アンギャマン/集英社

2ブロックは、P5~P9までの、5ページ。

ドアを開け、部屋から一歩出ると瓦礫が散乱し、廃墟のような建物。
(ユポはなぜこのような場所に住んでいるのだろうか…。)

そんな色味のない世界に、花だけが鮮やかに世界を彩る。

花を尻目に移動を続けるユポに、横から「いらっしゃいませ~」と呼び止める女の声。

ページをめくると、花屋の店員が「贈り物にお花はどうか?」と営業してくる。

奇妙なものを見る目

©アンギャマン/集英社

すると、第一声を絞り出すのに難渋しながら

「用がありますので帰りにまた来ます」

©アンギャマン/集英社

と、ユポが応答。

「奇妙なモノを見る目」

「あなたは怒らない」
「確かに傷付いていても」

©アンギャマン/集英社

と、ナレーションが入る。

次ページで怪訝な顔をしている女店員の所へ、花屋の店長が登場し、

「どうしたのか?」と問う。

すると女店員は、

「なんていうか…」
「見た感じロボットだと思って話しかけたら なんか違う感じで…」
「でも合成声帯だったし」
「動き方もまるっきりロボットだったんですけど…」

©アンギャマン/集英社

と、答え、いぶかな顔をしていた理由を吐露する。

このセリフにより、この世界では二足歩行型の人型ロボット(アンドロイド)一般的に広く認知されており、人間の日常生活にもロボットが自然に解け込んでいることがわかる。

それを聞いた店長は「しまった」という顔をしながら、そのお客はユポさんだ」と答え、

ページをめくると、店長の証言により、ユポの過去の一端が明らかとなる。

「ユポさんはロボットじゃない 人間だよ」

「結構有名な科学者だったらしい」
「でも何年か前 何か…実験中の事故にあったらしくてね」

「体を脳以外全部 機械に入れ替えて やっと助かったそうだ」

©アンギャマン/集英社

女店員と店長の会話から、完全機械であるロボット一般的だが、
機械改造されたサイボーグ(中身は人間についてはあまり一般的ではないようだ。

この対比は否が応でも哲学的なテーマを含んでくる。

  • 人間の容姿を模していて、外見人間だが、持たないロボット
  • 体を機械に改造され、外見ロボットだが、持っているサイボーグ(中身は人間)

この二つは多くの場合、外見上区別がつかない

今回の作品でも人間であるユポが、ロボット間違われるシーンが繰り返し登場し、強調される。

これは人体機械入れ替えていく過程で、どの程度生体部位を残せば人間性が保たれ、何を欠如すると人間性喪失に繋がるのかというテーマでもある。

次ページで店長が

「ユポさんはロボットに間違われるのが嫌で」
「ほとんど 出歩かないそうだ」

©アンギャマン/集英社

と語り、第1ブロックの、部屋で独りきりの理由の一つが

ロボットに間違われるのが嫌だから

だと確定する。

ここまでが2ブロックである。

第2ブロックではユポの過去が明らかとなり、以外は全て機械入れ替えたという衝撃的事実と、

ユポにとってロボット間違われるのは“大きな苦痛であることが提示される。

第3ブロック:体に異常はなし。…心は?

病院、検査後

©アンギャマン/集英社

3ブロックは、P10~P13までの、4ページ。

花屋からシーンが切り替わり、病院とおぼしき施設で検査を受けた後のシーンのようだ。

女医から「すべて異常なしです」と検査結果を告げられ、ユポは帰り支度を始めている。
帰ろうとするユポに女医が心理カウンセリングを勧めてくる。

このシーンのやりとりは、機械の体異常はないが、人体部位をしか持たないユポに、
そのような状態で異常をきたしてないか検査必要だと、医師の立場から判断した結果であろう。

そのまま女医が、所属している心理カウンセラーは優秀だから、一度対話してみてほしいと勧めると、

次ページで、

「思考の音声出力は脳への負担が大きいので 口答でのカウンセリングでしたら結構です」
「メールでの精神傾向テストにもパスしていますので」

©アンギャマン/集英社

と、心理カウンセリングを丁重にお断りする。

ユポにとって思考の音声出力は、脳へかなりの負担を要するようだが、

「それでも わたしには話しかけてくれるのね」

©アンギャマン/集英社

と、ナレーションが入る。

つまり、への負担が大きい音声出力を介してでも、にだけはを出して話しかけていることがわかる。

すべてを知る蓮。

ナレーションは続く、

「あなたの苦痛は誰にもわからない」
「わたしは知ってる あなたは強く優しい人」

「悲しくない日は ないのに」

「あなたは誰も責めない」
「あの事故ですら」

「自分で良かったなんて」
「あなたは本気でそう思ってるのね」

©アンギャマン/集英社

ここまでが、3ブロック。

第3ブロックでは、機械の体となってしまったユポの状態にスポットをあてるブロック。

生身の肉体と違い、機械の体では“温かさ”も“冷たさ”も、“”も“匂い”も“痛み”も“肌触り”も何も感じない

を歩けばロボット間違われ、周囲の人々からは奇妙モノを見るに晒される。

普通なら精神がおかしくなっても不思議ではない。

病院の検査で異常はなし”との事だが、はどうなのか?

すべてを知る蓮は語る。

ユポ強く優しい人だと。

そう、機械の体となってしまったでも変わらずユポは強くて優しい人なのだ。

第4ブロック:「ありがとうロボットさん」

建物から火の手。火事

©アンギャマン/集英社

4ブロックは、P14~P21までの、8ページ。

ページをめくると、

突然、爆発音が辺りに響き渡り、マンションの一室から火の手が上がっている。

火事だ。

混乱する雑踏。

ユポからは特に動揺した様子は窺えないが、
火の海から子供泣き叫ぶ声を聞き取ると、一転、即座に助けに向かうユポ

実験中の事故の時も、今回の火災時も、自らの危険は顧みず、他者を命懸けで助けるという、
利他的行動をとれるのが、ユポの“強く優しい”部分である。

火の海の中、人命救助に向かうユポ

©アンギャマン/集英社

ページをめくると、

燃え盛る火の海をかきわけ、逃げ遅れた子供を探索するユポ。

体中、火に包まれ、文字通り燃えながら人命救助に向かえるのは
機械の体ならではといえる。

次ページ、屋外のシーン。

理性を失い、わめき散らし、錯乱状態の母親らしき人物。

子供を助けるため、無謀にも火の中に飛び込もうとしているところを
周囲の人々に取り押さえられている。

そこへ、

ページをめくると、大ゴマで、子供抱きかかえながら、救出から無事に帰還したユポのアップ。

その姿はフェイスマスクや服が焼けただれ、機械部位が露わとなっている。

次ページで、母子感動の再会を果たし、ユポはいまだ燃え盛る体についた火を消火器で消してくれと要望。

ページをめくると、

消火器で消火してもらいながら、周囲の人々から称賛されるユポ。

火の海から命懸け子供助け出した英雄に、

拍手喝采だ。

しかし、無情にもその称賛の声がユポを傷つける。

「良くやったな ロボット!」

©アンギャマン/集英社

そして、助けた子供にも、

ありがとうロボットさん

©アンギャマン/集英社

「ありがとう ロボットさん」

©アンギャマン/集英社

ここまでが4ブロックである。

第4ブロックを一言で表すと、報われない善行である。

研究所の人や、花屋の店長など、一部の人を除き、ユポ人間だと知る者は少ない。
以外すべて機械となったユポと、一般的なロボットでは外見上がないため、ほとんどの人々はユポロボットだと識別する。

せっかく、命懸けで子供を助けても、その善行は報われることなく、
ユポを傷つけるのだ。

第5ブロック:大きく開花した蓮の花

表情が変わるユポ

©アンギャマン/集英社

5ブロックは、P22~P26までの、5ページ。

火事の騒動から、一段落ついたユポは、雑踏の中、帰路につく。
体中ズタボロとなった容姿に冷たい視線を感じつつ、

ナレーションが流れだす。

「あなたの悲しみはだれにもわからない」
「あなたはつよく優しい人」
「あなたはだれも責めない」

「世界が何度 あなたを傷つけても」

「あなたは世界を呪わない」

©アンギャマン/集英社

実験中の事故を境に人生一変してしまったであろうユポ。
多く失ったユポであったが、今も変わらず強く優しい心を持ち続けている。

だからたとえ、世界に何度、傷つけられても

誰も責めないし、呪わない。

ナレーションは続く、

「つよく」
「優しく」
「気高く」
「美しい」
「あなたはわたしにそう言った」

©アンギャマン/集英社

火事の騒動からだいぶ時間が経過したのだろうか、
崩れかけの壁面が茜色に染まっている。

そして、家路についたユポが自宅の扉を開けると、
作中で唯一、ユポの表情が変わるシーン。※事故後のユポ

目を見開き、何かに驚いているようだ。

ユポの視線の先には

大きく開花した蓮の花

©アンギャマン/集英社

「それは全て あなたの事だと わたしは知ってるわ」

©アンギャマン/集英社

大きく開花した蓮の花

ページをめくると、

「泣いていいよユポ」
「わたしはあなたを愛している」

©アンギャマン/集英社

声を上げて泣き崩れるユポ。

ここまでが5ブロックである。

それまで無表情感情出さなかったユポが、第5ブロックでは表情を変え、

を上げて泣き崩れる

これは“どういった種類感情なのだろうか?

ヒント蓮の花が握っている。

蓮のつぼみ

ハスは、水底の土中に塊茎をつくり、そこから葉と花茎を水面に伸ばす水生植物です。

ハス|みんなの趣味の園芸|NHK出版

上記のような特徴は様々なメタファーとして宗教にも取り入れられている。

蓮の花泥の中をはり、その穢れることなく撥水作用によるロータス効果、やがて地上綺麗な花咲かせる

仏教の世界では、

現世の「苦しみ」や「悲しみ」、「不安」や「恐怖」、「怒り」や「嫉妬」など、

煩悩象徴だ。

そのような辛く苦しい人生というの中から咲いた蓮の花は、
悟りそのものだとは言えないだろうか。

ユポの人生は決して平坦ではない。

大きな事故で脳以外のすべてを失い、異形姿となってしまってからは偏見の目で見られる日々。

その姿のせいで、善行をおこなっても報われることはない

それでもユポはつよく優しい心を持ち続け、不撓不屈精神で自分の人生を受け入れている。

だから、傷つくことが分かっていても、火事で逃げ遅れた子供がいれば迷わず助ける

そして、この日は子供を助けた帰りに、蓮の花開花した。

これは一蓮托生の語源にもなっている、善行を行なった者は死後に極楽浄土に往生し、
同じ蓮の花の上に身を託し生まれ変わるという思想があるが、

第1ブロックの蓮の言葉を思い出してほしい、

「わたしの言葉があなたに届けばいいのに」

©アンギャマン/集英社

残念ながら蓮の言葉はユポには届かないが、
花を咲かせることで思いはユポに届けられたのだ。

どんなに辛く苦しい目に遭ったとしても、
止まない雨がないように、その先には悟りが待っている。

濃いほど、その後に咲くは、

つよく」「優しく

気高く」「美しい

総括

この手の作品は、ボ~っとした軽い気持ちの流し読みでは、

本質まで辿り着けない。

エンターテインメント性の低さや淡白な演出は、深く踏み込む前に難解という烙印を押され、離脱を招く。

だが、よく練られたプロットの構成は非常に巧みで、キャラクターの造形もページ数以上に深く描かれている。

噛めば噛むほど味が出る”、スルメのような作品だと言えよう。

噛み倒して向こう側へ行った時、この作品と出会えたことの喜びに気付くはずだ。

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